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車×木工×キャンプ。スキルを集大成した「バンライフビルダー」までの道のり/CielBleu. 茨木一綺・美伽

デザイナーズユニット「CielBleu.(シエルブルー)」の茨木一綺(ワカ)さん、美伽(アネゴ)さんご夫妻。同ブランドを一躍有名にしたのは、電車でキャンプに行く人でも簡単に持ち運べるテーブルだった。そして現在はバンライフビルダーとしても活躍。それらすべては仲間との絆から生まれている。

かつては人気キャンプブロガーだった


日本オートキャンプ協会の推計によると、2017年にオートキャンプを楽しんだ人口は840万人と5年連続で増加中。いまや空前のキャンプブームとなっている。そこにはさまざまな理由があるが、ひとつにロースタイルと呼ばれる新しい楽しみ方が生まれたことも大きい。

ロースタイルとは、低いテーブルやチェアを使うことで視点が下がり、自然をより開放的な気分で味わえるというもの。そのルーツにはクラシック回帰がある。彼らは古き良き木製のキャンプ用ファニチャーを揃え、そこに馴染むテントや小道具にも徹底的にこだわった。そのスタイルは、当初いくつかの個人ブログを中心として広まる程度だったが、Instagramの浸透と呼応するように3~5年前から爆発的にヒット。現在もその人気は衰えを見せない。

シエルブルーのワカさんもまた、かつてはキャンプ系の人気ブロガー。その後、自作のテーブルが話題を呼び、シーンを牽引する存在となっていく。

妻や仲間のためのDIYがブランドのきっかけ


「はじまりは当時、アネゴ(妻)が自宅で始めたおうちカフェなんです。そこで使う什器、椅子、ベンチとかを自作していて、評判が良かったので店頭でも売り出したんですよ。若い頃にカーオーディオインストーラーとして自動車内装を木工で作ったり、宮大工の先輩の手伝いをしていたこともあって、木工も得意でしたし」(ワカさん)



子どもの頃から車いじりが大好きで、DIYはお手の物。人が喜んでくれるのを見るのも好きだったという。当時も、キャンプ好きの仲間が「アメリカの老舗ブランドのようなテーブルを作りたい」と言えば製作をサポート。友だちのイラストレーター・こいしゆかさんが「リュックでも持ち運べるかわいいキャンプテーブルがあったらいいな」と聞けば、コンパクトになるテーブルを工夫して作ってプレゼントした。

その、こいしゆかさんのテーブルが噂となり、キャンプ好きの間で評判となっていく。以降、シエルブルーはアウトドアファニチャーブランドへと舵を切ることになる。それから2年後には、倉敷から埼玉への移住という英断を下した。



東京の近くに拠点を構えることのメリット


「ブランドの認知度が上がっていくと、メディアから”取材をしたい”という連絡が来るようになるんです。でも、場所が倉敷だとわかった途端に話が流れてしまう。そんなことが何度か続いたので、”最後のチャレンジをさせて欲しい”とアネゴに頼んだんですよ。日本のヘッドクォーターは東京だし、このまま倉敷でやっていてもチャンスを逃すって」(ワカさん)

そこで家族は埼玉県松山市に移住し、自宅に作った工房で、夫婦でテーブル製作を続けることとなった。同時に、アウトドアイベントに出店するなど積極的にブランドをアピール。デザイン性の良さや機能性、耐久性の高さはすぐに話題となり、作ればすぐにSOLD OUTになるほどに成長。同時に、メディアでのアウトドアスタイリングやコーディネート、イベントプロデュース、企業とのコラボレーションなど、ファニチャーに限らずキャンプにまつわる仕事が増えていくように。いまでは業界の重鎮的なポジションを獲得している。



これまでの経験の集大成、バンライフビルダーという仕事


「2年半前に野外選曲家の河合桂馬くんから”ハイエースをバンライフ風にカスタムしたいと頼まれたんです。でも、当時はアメリカの車上生活スタイルであるとは認知していたけど、バンライフがどんなものか知らなかった。彼からそのカルチャーを教えてもらってすぐに、”これ、かっこいいじゃん!”って魅了されたんです」(ワカさん)





バンライフとは、ラルフ・ローレンのコンセプトデザイナーだったフォスター・ハンティントン氏が、2011年に会社を辞めてスタートさせた新たなライフスタイル。お気に入りのカスタムを施した自家用バンに最小限の物だけを持ち込み、消費社会を否定するかのように各地を転々としながら車上生活をするスタイルはバンライフと呼ばれた。そのシンプルでいて精神的に豊かな生活は世界中に多くの影響を与えた。

「河合桂馬くんに、”車いじれるし、木工の技術もあるし、キャンプにも精通している。ワカさん絶対にコレだよ”って言われて。確かになって思ったんです。まだ学生の子どもがいるので完全なバンライフ(車上生活)はまだ無理だけど、自分でも”造ってみたい”と思いましたし、桂馬くんと一緒に流行らせようと話をしました。今はバンライフビルダーが仕事の中心になっています」(ワカさん)

常に仲間を大事にし、彼らから刺激を受け、それが仕事のきっかけとなってきたワカさん夫婦の人生。新たに始めた「バンライフ」という切り口もまた、いま大きなうねりをあげながら静かに広がりを見せ、シエルブルーにも問い合わせが急増している。

次回の記事では、そんな現在の具体的な仕事内容について紹介していく。

text富山英三郎

  • photo下城英悟(GREEN HOUSE)