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カメラの変形ギミックが変態的!12年前のハイエンドスマホ『ノキアN93』はなぜ廃れたのか



今月のヘンタイ端末はこれだ!




Nokia
N93
販売価格(当時):約7万8000円(550ユーロ)

縦横変形ギミックの最強カメラを搭載!
画質が高すぎでオーバースペック!


ガラケー時代は当たり前に見られた折りたたみ式の端末も、最近ではほとんど見られなくなってしまった。タッチパネルを使うスマホは画面がむき出しのほうが使いやすい。しかし、まだスマホの画面が今より小さく、10キー操作に頼っていた時代もあった。そして、その頃のスマホは折りたたみ型のものも多かったのだ。

今から10年前に世界のケータイ市場を牛耳っていたノキア。同社が作った折りたたみ型のスマホの中には、生産コスト度外視なギミックに溢れる変態スタイルな製品も多かった。その筆頭が2006年に発売された『N93』だ。ハイスペックなカメラも備えたデジカメスマホでありながら、前後左右に回転するヒンジを備えたことで、様々なスタイルに変化できる変形機構が魅力の製品だ。



今でこそスマホのカメラ画質は1000万画素、オートフォーカス、光学ズームなんて当たり前だが、『N93』発売当時はカメラが100万画素を超えるだけでもニュースになるほどだった。

そんな時代に登場した『N93』は320万画素カメラを搭載。レンズ周りはドイツの老舗の光学機器メーカー、カール・ツァイスが設計した。ヒンジ部分がゴツいのは、ヒンジ部分に横向きに光学3倍ズームレンズを内蔵しているからだ。



「ZEISS」のロゴ入りレンズキャップが付属するなど、まるでデジカメのような細かい仕上げも購入者をワクワクさせたものだ。

『N93』の外見は普通にありがちな折りたたみ型。ところがヒンジは一カ所のみで、そこが前後左右に自在に回転。つまり画面部分を縦だけではなく横方向にも開けるのだ。普通の折り畳み型ケータイでは不可能な、画面部分を横に開けば動画や映画を見やすいスタイルになる。



この状態でハンズフリーのビデオ通話をすれば、ちょっとした未来のコミュニケーター感覚で使うこともできるのだ。さらにはTVへの出力も可能なので、撮影したムービーやYouTube動画を大画面で楽しむこともできるのだ。

そして『N93』の本髄といえる、最もアクティブな使い方がムービースタイルである。画面を開き、さらに90度回転させ本体部分を手のひらで横方向に握れば、ハンディカムのようなスタイルでカメラを使うことができる。



その形状はどうみてもスマホではなく、目の前でそのギミック変形を見せられた人は『N93』に目が釘付けになるだろう。もちろん使用者はさりげなく変形させつつ「ニヤリ」と軽く微笑むだけでいい。当時毎月のようにスマホ新製品を発表していたノキアだからこそ、こんな遊び心を持ったハイエンドスマホをさらりと市場に出すことができたのだ。

だが、今から12年前では『N93』のカメラはオーバースペックだった。まだSNSも産声を上げたばかりであり、低速な3G回線では『N93』で撮影した高画質な写真や動画をシェアするのは難しかった。

また、見る側のスマホもまだまだ3インチ以下の小さい画面が主流だったのだ。翌2007年にはスリムサイズの後継機、『N93i』を発表してユーザー層拡大を狙ったが、同じ時期にアップルが初代iPhoneを華々しく発表。どちらに世間の注目が集まるかは明白だった。

ノキア自慢のカメラスマホも、注目を集めたのはわずかな期間に留まってしまったのだ。

山根康宏(やまねやすひろ):香港在住のジャーナリスト。世界の携帯電話事情を追い求め、1年の約半分を海外で過ごす。携帯電話1500台、SIMカード500枚以上を所有するコレクターでもある。

『デジモノステーション』2018年7月号より抜粋。

text山根康宏