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デザイン華やか、コスパも優秀。フレンチ・ウォッチの甘美な誘惑【2019年はフランスが来る!】

華やかなデザインと高いコストパフォーマンスに思わず手を伸ばしてしまいそう……。フレンチ・ウォッチの甘美な誘惑


現在、時計の生産はスイス中心だが、隣国フランスはスイスに先立って時計製造を始めた国のひとつ。
今もフランスの時計ブランドは多く、なかでもデザインの面白さと、スイス製に比べて手の届きやすいプライスを実現したタイムピースは、次の選択肢に加えたくなる魅力にあふれている。

【Profile】

広田雅将:クロノス日本版 編集長
1974年生まれ。時計ライター/ジャーナリストとして活動する傍ら、2016年より高級腕時計専門誌『クロノス日本版』編集長を兼務。国内外の時計賞の審査員を務めるほか講演も数多く行い、愛好家の支持を得ている。

最近、いわゆる“フランス時計”が面白いという声をよく聞く。スイスは相変わらず高品質な時計を作っているが、総じて真面目だし、景気の悪くなった昨今はなおさらだ。また、市場の動向に敏感すぎて、ラインナップが売れ線に偏りがちなのも気になる。対してここ数年の“フランス時計”は、スイス製の時計にはない要素を打ち出そうとしている。つまりはデザインとカラーだ。

昔から、フランスの時計は形と色に個性があった。しかし、市場に十分なインパクトを与えられなかったのは、当時の技術が十分でなかったためである。ケースに複雑な形を与えるにも、ストラップに濁りのない色を与えるにも、高度な技術が必要だ。かつてそれを得ることは難しかったが、技術の進歩はいよいよそれを可能にしたのである。今や「フランス時計に勢いがある」と言われるのも納得だ。

そういった好例には、ベル&ロスがある。工場はスイスにあるが、ふたりの創業者はフランス人であり、フランスブランドであることを誇りにする会社だ。長らく、シンプルなラウンドケースの時計を作ってきたが、非常に凝ったスクエアケースの『BR-01』で成功を収め、今や押しも押されぬ大メーカーとなった。正直、20年前であれば、デザイナーであるブルーノ・ベラミッシュの考える、複雑なスクエアケースは作れなかったはずだ。しかし、新しい工作機械を採用したことにより、ベラミッシュの考えたユニークなデザインを、そのまま製品化できるようになったのである。

染料の進化も、フランス製の時計をカラフルにした。かつて、ラバーやレザーストラップに鮮やかな色を与えるのは難しかったが、新しい染料は、色落ちしにくいだけでなく、鮮やかな色味をもたらすことに成功したのである。

もちろん、こういった進歩はスイスや日本の時計もカラフルにしたが、それ以上に、もともと色に特徴のあった、フランス時計ではいっそう際立っていた。例えば、リップの『マッハ2000 クロノグラフ』。1973年に発表されたこの時計は、ユニークなデザインと、カラフルなプッシュボタンで、後の時計に大きな影響を与えた、いわばフランス時計の“アイコン”である。

その黄、赤、青色のプッシュボタンは目を惹くには十分だったが、当時の技術では、鮮やかな色を与えられなかった。しかし、新しくなった『マッハ 2000 クロノグラフ』には、かつて持ち得なかった、濁りのないカラフルなプッシュボタンが与えられたのである。

もうひとつ、フランスの時計には知られざる美点がある。スイス製の時計に比べて値段が安いということだ。スイスの時計は高品質だが、それを支える職人の賃金は毎年のように上がっている。対してフランスの賃金は日本に比べて高いが、スイスほどではない。そのため、高い品質のものを比較的手頃に作れてしまうのだ。

この路線で成功を収めたのが、ペキニエ マニュファクチュールだ。例えば『リュー ロワイヤル3フォンクション フレンチトリコロールカレンダー』は、トリプルカレンダーにパワーリザーブ表示、そして自社製ムーブメントを載せているにも関わらず、価格は100万円ちょっとだ。内容を考えれば驚異的に安いが、言い換えれば、フランスの賃金はスイスほど高くないということだ。

新興メーカーのミッシェル・エルブランも、やはり良質で手頃な価格の時計を作っている。良質なケースと、機械式の自動巻きムーブメントを載せている『ニューポート オートマティック』の価格は約21万円。写真が示すとおり、文字盤やケースの出来は非常に良く、決して20万円代の時計には思えない。また、鮮やかな色味もフランスメーカーならではの重要なファクターだ。

では、肝心な技術力はどうなのか。それが、スイスに引けを取らないほど高いのだ。そもそもフランスという国は、モノづくりの歴史が長い。フランス製の眼鏡はその高品質で知られているし、自動車や戦闘機も、世界的な名声を得ている。ついでに言うと、エアバスはフランスとイギリスの合弁会社だ。そういった土壌から生まれれたフランスのメーカーは、総じて技術力が高い。

また、スイス国境に住むフランス人たちが、こぞってスイスの時計メーカーで働いていることを考えれば、フランス人は職人としても優秀であると言えよう。事実、スイスで成功を収めた時計師の中には、フランス人が少なくないのである。

デザインと色に個性があり、価格が控えめで、実は高い技術力に支えられるフランスの時計。まだまだ数は少ないが、今後広まっていくに違いない。

フランスの時計が魅力的な2つの理由


reason 1.ユニークで華やかなデザイン
かねてより、スイスと比べてフォルムと色使いが個性的だったフランスの時計。時代の流れとともに工作機械や染料が進化したことで、形状はさらにユニークに、カラーも鮮やかさを増し、その魅力をさらに高めている。

reason 2.スイスと比べて高いコストパフォーマンス
フランスの時計が比較的お手頃なプライスで手に入れられるのは、スイスや日本と比べて賃金が安いから。にも関わらずクオリティはほかの時計生産国と比べても遜色ない……となれば、思わず手を伸ばしてしまいそう。

優美なデザインと実用的な機構を兼ね備える
PEQUIGNET MANUFACTURE/ペキニエ マニュファクチュール




リュー ロワイヤル3フォンクション
フレンチトリコロールカレンダー
価格:106万9200円

スイスとの国境近く、モルトーに設立された時計工房を起源とし、2009年には8つの国際特許を取得した完全自社研究開発ムーブメント「カリブル ロワイヤル」を発表したマニュファクチュール・ウォッチメーカー、ペキニエ。このムーブメントを搭載した定番ライン『リュー ロワイヤル』をベースに製作された日仏交流160周年記念モデルは、デイデイトとストラップに施されたフレンチトリコロールが目を惹く。自動巻き。SSケース、100m防水、ケース径42mm。

記念モデルではデイデイト表示とストラップにフレンチトリコロールを採用するとともに、曜日はフランス語で表示。ダイアルのデザインはフレンチブランドらしい上品さが漂う。
搭載されるカリブル ロワイヤルは実用面を考慮した高機能ムーブメントで、パワーリザーブは88時間を実現。仕上げも美しく、コストパフォーマンスの高さを実感できる。



リュー ロワイヤル3フォンクション
トリコロール ハンドワインディング
価格:51万8400円

日仏交流160周年記念コレクションのラインナップに新たに加わったのは、ブルースチールの時分針とレッド針のスモールセコンドを採用した手巻きモデルで、シンプル&クラシカルながら遊び心も感じさせる。パワーリザーブは約100時間。手巻き。SSケース、100m防水、ケース径42mm。

航空計器をモチーフにフランスの洗練さが宿る
BELL & ROSS/ベル&ロス




ベル&ロス
BR 03-94 R.S.18
価格:88万5600円

空計器に着想を得たデザインのなかにも洗練された雰囲気が顔を覗かせるベル&ロス。それも、生産拠点はスイスとしながら本社をパリに置いている所以だろう。このモデルもルノー・スポール F1チームとのコラボレートによって実現したスポーティなルックスが印象的。F1マシンのシャーシにインスパイアされたケース構造と、チームカラーを挿し色にしたカラーリングがなんとも力強い。自動巻き。チタンケース、100m防水、ケースサイズ42mm。





ベル&ロス
BR V2-94 レーシングバード
価格:58万3200円

デザインのモチーフは、リノ・エアレースにインスパイアされた独自企画のプロペラ機「BRバード」。ラウンド型ケースを採用したヴィンテージライン「BR V」をベースに、ブルーとオレンジの配色が軽快な雰囲気を放つ。自動巻き。SSケース、100m防水、ケース径41mm。

フランスらしい色使いで長く愛用できる時計を追求
MICHEL HERBELIN/ミッシェル・エルブラン




ミッシェル・エルブラン
ニューポート オートマティック
価格:21万3840円

1947年、スイスとの国境に近い町シャルクモンに設立。“長く愛用できる時計をすべての人へ”という創業以来のコンセプトは今も受け継がれ、コレクションはフランスらしい色使いを取り入れながらも普遍的なデザインにまとめられている。それを象徴するのがデビュー30年を迎えてリデザインされた『ニューポート』。舷窓を想起させるディテールを継承しながらも、モダンで上品なルックスに仕上げている。自動巻き。SSケース、10気圧防水、ケース径41mm。





ミッシェル・エルブラン
トロフィー INLAND
価格:14万400円

2018年デビューのコレクションで、コンセプトは“冒険”。30気圧の防水性を備えたダイバーズ・モデルだが、ベゼルのフォントやINLAND(陸)を想起させるダイアルのパターンなどにフレンチブランドらしいセンスが冴える。自動巻き。SSケース、30気圧防水、ケース径42mm。

リーズナブルだが仕上げの美しさに定評あり
YONGER & BRESSON/ヨンガー&ブレッソン




ヨンガー&ブレッソン
YBH8568
価格:9万8280円

1975年にモルトーで創業したヨンガー&ブレッソンは、シンプルでクラシカルなデザインを得意とするブランド。価格帯は10万円前後とリーズナブルだが、仕上げの美しさに定評があり高い満足感が得られる。写真は2018年発表の新作で、ダイアルの12時位置に設けられたパワーリザーブ表示とローマンインデックスを組み合わせた上品なルックスが特徴。パワーリザーブも40時間で実用性も十分だ。自動巻き。SSケース、50m防水、ケース径39mm。



ヨンガー&ブレッソン
YBH8572
価格:6万2640円

ダイアルにソレイユ装飾を施したカレンダー付きの三針モデルで、チャコールグリーンのストラップとのコンビネーションがエレガントなルックスを創出。オニオン型のリューズもクラシカルな雰囲気をより高めている。自動巻き。SSケース、50m防水、ケース径39mm。

フランスらしい遊び心が詰まったデザイン
LIP/リップ




リップ
マッハ ダイオード
価格:3万7800円

1867年にブザンソンで創業したLIPはクラシカルな時計を製作する一方、『マッハ2000』シリーズに代表されるモダンなピースも得意とするブランド。同シリーズはフランスを代表するデザイナー、ロジェ・タロンの手によるもので、この『マッハ ダイオード』も1976年にタロンが手掛けたダイオード表示の時計をLED仕様で甦らせたモデル。シンプルで潔くもフランス流の遊び心がしっかりと詰まっている。クォーツ。SSケース、5気圧防水、ケースサイズ35mm。





リップ
マッハ2000 クロノグラフ
価格:7万5600円

1975年に発表された『マッハ2000』は時計業界で初めて工業デザイナーが手掛けた時計として知られる名作。装着感を高めた左右非対称のデザインと、操作性に優れるプッシュボタンの色使いがなんともユニーク。クォーツ。SSケース、5気圧防水、ケースサイズ42×40mm。

【2019年は間違いなくフランスが来る!】

フランスには、誰もが憧れを抱くオンリーワンの魅力がある。
その証として、観光地としてはもちろんのこと、クルマ、時計、インテリア、ファッション、はたまたテクノロジー界隈などどの角度から眺めても、他の国とは違うイケている要素が必ず見つかるのだ。今はたまたまデモなどの影響で、パリの街を中心に荒れた映像が流れている。だが、フランスに対する多くの人々が持つ、秘めたる想いは変わらないだろう。2019年は間違いなくフランスが来る!

『デジモノステーション』2019年2月号より抜粋。

text広田雅将

  • photo下城英悟(GREEN HOUSE)
  • photo江藤義典
  • textタケイシユーゾー


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