TOPd.365自分の会社・仕事に危機感を持て!プロ経営...

自分の会社・仕事に危機感を持て!プロ経営者が教える、変化を怖れずチャレンジし続ける生き方



成功体験が変化への足かせとなる。
常に危機感を持とう。さもなくば滅びる。


ほとんどの企業では、新入社員の入社後に、新入社員研修がおこなわれる。社会人としての基本、会社の基本的なルール、仕事の進め方などを身に着けることが目的だ。

また、社内で定期的に様々な研修を実施する企業も少なくない。この社員研修には利点も多い。給料をもらって勉強させてもらえるのだ。社内で資格取得援助制度があったり、社外のセミナーや勉強会への参加を奨励していたら、最大限に活用すればいい。私も外資系企業の本社役員として海外で様々なトレーニングを受けさせてもらったことにより、たくさんの学びと気づきをもらっている。そこで学んだことは今でもとても役に立っている。



しかし、社内のルールや仕事の仕方を学ぶ場合、「そのルールは、外の社会で通用するか」「その常識は、一般的にも常識なのか」という視点を失ってはならない。

ここで例をあげる。「丸くなったね」という言葉は、成長したという良い意味で使われることが多い。しかし、ビジネスマンとしては違う。角が取れた、丸くなったは魅力を失ったと同義だ。

仕事上で納得できなかったことに異を唱えていた人が、いつのまにか会議で発言をしなくなっていく。「判りました」という発言が増えていく。そのことが、「丸くなった」と評価される。社内のルールに、独特の論理で動く会社という社会に馴染んだ、「Welcome to our club」だ。そのクラブが世間で通じるビジネスかどうかよく考えるといい。おそらくまやかしだ。

いま好況の業界でも、5年後、10年後に好況とは限らない。むしろ環境が変わっていくのが当たり前だ。未来の予測は困難だ。なにもわざわざ不景気の業界に就職することもないと思う。自分が入った業界、会社の勢いが失われたときにどうすべきかだ。



私がかつて在籍したソニー・ピクチャーズ・エンタテインメントは業績が最悪にひどかった。清算するか建てなおすか、という選択肢が私の手に委ねられていたほどだ。

社内の中堅・幹部社員はビデオ業界が活況だった頃に入社した人たちばかりだった。1本一万円以上するVHSビデオがどんどん売れた時代。ビデオレンタル店が雨後の竹の子のようにどんどん開店していた時代だ。彼らは20代、30代と好調業界の恩恵にあずかってきた。濡れ手で粟という言葉があるがまさにその通りで、ビデオを出せば出すだけ成績は上がったのだ。

ところが、業界そのものが傾くと様相は一変する。変化についていけない。業績が上がらないことを「景気が悪いから」で済ませて、変化に対応し工夫すること、新しいことへのチャンレンジをしなくなってしまう。そういう経験がないのだから仕方がないと。

ビデオレンタル店が減っているから、ビデオの売上も下がる。ならば別の方法で売上を上げようという発想をしない。好況業界で仕事をしてきた人は、問題解決をした経験が少ない。そういう人たちが年次を重ねて管理職になっている。そんな環境では、若手社員が局面を打開しようと新しいアイデアを開陳しても、却下してしまう。変化が怖いのだ。

変わらなくてもうまくいったから、変わることが怖い。変化してうまくいったら、それまでの自分の成功体験が嘘だったことになってしまうと感じる。自分の今までのキャリアの全否定など受け入れられるわけがないのだろう。好況業界で誰がやってもうまく言った仕事など、成功体験ではない。ましてや、個人のスキルでもない。それを認めることが出来ない。だから衰退する。



家電業界も同じだった。高度経済成長期は「作れば売れる」時代だったという。三種の神器といわれて、テレビ、洗濯機、冷蔵庫が飛ぶように売れた。カラーテレビ、ビデオデッキ、エアコン、作るそばから売れていった。

ところが、いまはそんな環境ではない。かつて白黒テレビからカラーテレビに転換したとき、モノラルテレビがステレオ放送になったとき、テレビの買換需要は爆発した。いま、3D対応だ、4K対応だ、有機ELだと言っても簡単には売れない。パソコンがあればテレビが要らない。スマホがあればパソコンもいらないと言う人だっている。

コンビニがあれば大容量の冷蔵庫も必要ない。固定電話がない家庭も全く珍しくなくなった。名刺を見ても携帯電話番号、IP電話番号だけで、固定電話の番号がないケースも増えている。

そもそも、最近、知人との連絡はメッセンジャーアプリが増え、音声通話さえもアプリのものを使っていることがある。どの業界でもそうだ。活況を呈した業界も必ずいつか衰退する。人気業界、企業に入社できたことは喜んで良い。しかし、それに甘んじていては、10年後はわからない。仮に不人気業種に就職しても、むしろ「自分の力を付けるチャンス」と考えれば良い。

不人気業界がそのまま浮きあがらないことも十分にありえる。人気業界であろうが、不人気業界であろうが、危機感を持つことが大切なのだ。常日頃から5年後に自分の会社はどうなっているだろう、自分の仕事はどう変わっているかということを考えておかなければならない。

伊藤嘉明(いとうよしあき)/X-TANK CEO。世界のヘッドハンターが動向を注視するプロ経営者。ジャパンディスプレイのCMOも兼任。著書『どんな業界でも記録的な成果を出す人の仕事力』(東洋経済新報社/1620円)など。

『デジモノステーション』2019年4月号より抜粋。

text伊藤嘉明