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駐車場から自動出庫!留守番の家族と一緒にドライブ!?世界最大級の家電ショーCESで見たクルマの最新テクノロジー



今月のテーマ
#16 CES


松の内も明けぬ間に、米ラスベガスへと向かった。目的は、毎年1月に米ラスベガスで開催される世界最大級の家電ショー、CESである。モーターショーとは異なり、一般公開されないB2Bの見本市にもかかわらず、世界160カ国から約20万人もの出展者や来場者が集まる。巨大家電見本市でベールを脱ぐ自動車の未来を紹介していこう。

家電ショーから自動最新テクノジーの見本市へ


Consumer Electronics Show、通称「CES(=セス)」が1967年に初めて開催された当時、誰が今の姿を予想しただろうか? もちろん、家電の見本市という元来の役割も顕在で、メイン会場となるLVCCの「セントラル」には、パナソニック、ソニー、LGといった家電メーカーの巨大ブースが立ち並ぶが、増築された「ノース」は自動車メーカーや大手サプライヤーで埋め尽くされている。

CESが、自動車の最新テクノロジーの発表の場へと変容したきっかけは、CESの顔とも言える開幕前夜の基調講演をアウディが担当したことだった。同時に、自動運転のテスト車を持ち込んだことも、アメリカのメディアを賑わせた。

翌年、ダイムラーが基調講演を担当するとともに、自動運転のコンセプトカーをラスベガスの公道でデモ走行したことで、CES=自動車の最新テクノロジーのショーケースというイメージが定着した。

CESの会場付近でライドシェアのLyftをアプリで呼ぶと、ランダムにAptivが開発した自動運転の機能をBMWに搭載したテスト車がやってくる。

ジャーマン・プレミアムの中では最後に乗り込んだBMWだが、自動運転のテスト車をドリフト走行を披露して話題をかっさらった。以降、公道で自動運転車の運転席にジャーナリストを座らせてのデモ走行を行ったり、モバイルアイとインテルとの協業をCESで発表するなど、世間を騒がせるネタを連続投入してきたのだ。

もともと、地元のアメリカ勢や、準地元とも言える日本勢は、オーディオやナビといったインフォテインメントを出展していたに過ぎなかった。ところが、こうしたドイツ勢の動きを受けて、自動運転やコネクテッドといった最先端テクノロジーを披露する方向へと舵を切ってきた。

2016年にアメリカ最大の自動車メーカーであるGMが基調講演で新型EV「BOLT」を発表し、2018年にはトヨタもMaaS時代に向けたコネクテッド・カーの「e-パレット」コンセプトを登場させた。さらに、前回ご紹介した中国EVスタートアップであるBYTONも、CESをお披露目の場に選んでいる。

そんな風に、5GやAIといった先端分野に加えて、コネクテッドや自動運転といった自動車の最新技術も登場する“最新テクノロジー見本市”といった様相なのだ。

ハーマン・カードン、JBLなどの高級オーディオメーカーとして知られるハーマンだが、近年、サムソンによる買収後はADASを含め、コネクテッドの世界で重要な位置を占める。CESで発表したAOCでは、JDパワーと提携。顧客FBのうち技術要件についてはデバッグしてOTAで問題解決。OBDに後付けできるコネクテッドデバイスも開発。


自動運転の機能はもはや、当たり前


驚くことに、CESの会場周辺では自動運転のクルマが闊歩している。会場の正面の駐車場を拠点に自動運転のテスト車を走らせていたのは、フランスのメガ・サプライヤーであるヴァレオだ。フランス国籍ではあるが、自動運転の開発はドイツや日本でも行っており、2018年秋に「ハンズオフ ジャパンツアー」と銘打って日本を一周する6700kmものグランドツアーを敢行したばかりだ。

ヴァレオが開発した「ドライブ4U」なる自動運転システムは、2019年の最新版でも驚きの進化をしていた。ヴァレオ自慢の自社開発のLiDARを6+2個搭載することで、道路の合流地点などの難しいシーンでも難なく自動で走り抜ける。驚きはまだ続く。路上にある低いポールを検知して避けたり、左折(日本での右折と同等)や、歩行者の往来がある街中でも、難なく自動運転を続けていた。センサーで周囲の状況を検知することに加えて、AIが周囲の車や人の動きを予測することで、より人間の感覚に近い運転ができる。

ヴァレオが開発した最新の自動運転機能であるDrive4Uでは、各種センサーを駆使して車両の周辺情報をリアルタイムで得られる。自動運転では難しいとされる合流シーンでも、自動で運転を続けている。逆光の入る左折(アメリカは右側通行)という人間でも運転が難しいシーンも自動運転でこなしていた。

もう一つ、夢のある技術を見せてもらった。遠隔にいる人が同乗しているかのように仮想で再現できる「ヴォヤージュXR」では、遠くに住むおばあちゃんがリビングで座ったまま、家族のドライブに参加できる。実際には、自宅にいるおばあちゃんの動きをキャプチャーして、車内のバックミラーにARに映し出す。特殊なVRデバイスを使わなくても、姿が見えて会話もできるため、まるで一緒にドライブしているかのような感覚を味わえる。

ヴァレオが開発したヴォヤージXRでは、遠隔にいる人の動きをキャプチャーして、アバターをバックミラーに投影する。車載カメラで室内の人の動きも遠隔に投影できる。

日本勢も負けてはいない。日立グループが披露した最新の自動駐車の機能は、広大な駐車場の多いアメリカでは評判が高かった。具体的には、スマホを使ってクルマを呼び出すと、管制センターから指示が出て、自動で出庫する。簡単に聞こえるが、実は高度な自動運転システムを開発しているからこそ、実現できる機能なのだ。

最初にクルマを停めるとき、駐車場をマッピングして覚えておいて、出庫時には、車両の周囲を検知しながら走る。もちろん、カートが放置されていれば避けるし、横断する人がいれば自動ブレーキをかける。スバル「アイサイト」でお馴染みのステレオカメラの技術を応用も興味深かった。路面の凸凹を検知すると、足回りの設定を変化させて、乗り心地を向上させる。

細かな路面形状を高精度に検知可能な車載用ステレオカメラ向けの技術も興味深い。現状、車載用ステレオカメラは、高度ドライバー支援システムに使われており、2つのカメラを使うことで人間の視覚と同じく、障害物との距離が測れることがセリングポイント。

ディズニーと手を組むアウディ 新車を発表するメルセデス


CESを自動車テクノロジーのショーケースにした火付け役であるアウディは、驚くことに、スタートアップ企業「ホライド」社をディズニーと共同創業すると宣言した。VRデバイスを装着して、後席に座ると、実際の加速とVR画像が連動して、新しいインフォテインメント体験ができる。車載VRに対応するプラットフォームを解放することで、他の自動車メーカーや開発会社が利用できる仕組みだ。

インフラが整う3年後を目処に商品化すると聞くと、俄然、気になるのがVR酔いだが、実際の感覚と視覚からの体験を同期させることで、乗り物酔いを大幅に軽減できるという。

アウディがディズニーと共同設立する車載VRエンタテインメントのスタートアップであるホライドで開発するVRエンタテインメントの車載デモには、長蛇の行列ができていた。車内でVRゴーグルを装着して楽しむ後席エンタテインメントを3年以内に提供する方針だ。

一方のメルセデス・ベンツは、新型「CLAクーペ」の発表の場に、CESを選んだ。新世代インフォテインメント・システムである「MBUX」を進化させたことも見逃せない。最新のスマホやスマートウォッチと連携するのはもちろん、同等のハードウェア/ソフトウェアを車載している。

メルセデス・ベンツは、フルモデルチェンジした新型「CLAクーペ」を発表。NVIDIA製半導体を駆使して描かれるグラフィックは鮮明で、ヘッドアップディスプレイもフルカラーだ。カスタマイズも可能で、ソフトウェアは学習を続けて進化する。タッチパッド式パネルに手を近づけると、センサーが反応して操作できる非接触モードで作動する「インテリアアシスタント」も搭載される。

日本勢も、個性的な発表が続いた。ロボット向けプラットフォーム「RaaS」を発表したホンダは、データ蓄積、共有、通信制御、状態遷移、ロボット間連携などの共有する機能を、インターフェイスともにパッケージで提供すると宣言した。

RaaSは、ホンダ専用ではなく、ロボット、システム、アプリをこのプラットフォームを解放して、パートナーシップを拡大することにより、つなぎ目のないロボットのサービスの実現する方針だ。ホンダでは、バッテリパックの標準化にも注力しており、自動車メーカーの枠を超えて、エネルギー、AI、RaaSプラットフォーマーと全方位で「動くもの」としてのロボティックス全体の作動環境の構築を目指す。




日産は、見えないものを可視化する「I2V」に挑戦した。車載センサーが集めたデータとクラウド上のデータを統合し、カーブの向こうの見えない場所まで状況を、車内のアバターが教えてくれる。

日産が持つ複数の技術、具体的には「プロパイロット」、「Seamless Autonomous Mobility(=SAM)」、室内センサーからの情報を統合する「オムニ・センシング」の機能を使って、リアルタイムに車内外の状況を把握して、全方位の情報を収集する。そこから得られたデータを元に、クルマの周囲360度のヴァーチャル空間を作り出し、周囲のリアルな情報を重ね合わる。

自動運転の最新テスト車「P4」のシステムを発表したトヨタは、勇気ある発表をした。2018年夏に自動運転車の運転をマニュアルモードで行っていた時に起きた事故の詳細を伝え、もし「トヨタ・ガーディアン高度安全支援システム」を使用中であれば、この事故は防げたと宣言した。

昨年までと、2019年のCESの最大の違いは、「自動運転やコネクテッド・カーは、未来の技術ではなく、手が届くところまできている」という点だ。事実、夢として語る技術ではなく、現実的なビジネス展開を目論んだプラットフォームの発表が多かった。

電動モビリティ、自動運転、車載AIは秒読み段階に入り、コネクテッドもインフラの整備を待つばかりだ。クルマもIoTの一部になる、そんな時代が幕を開けつつある。

BOSEはダウンタウンに独自の会場を設けていた。送迎車の中では、市販のヘッドセットと連動して、パッドから各人のヘッドセットにカットインして会話できるコミュニケーションツールを体験。マツダ3向けに開発した車載オーディションでは、前輪の付け根にウーハーを配置し、強度部品に設置することで小型車でも音質を担保。最近のトレンドとして、クルマの軽量化と電動化により、低周波ノイズを低める要求に対応すべくダンパーの付け根に振動センサーを搭載し、そこから発生するノイズを予測し、逆波長で打ち消すシステムを提案。

川端由美(かわばたゆみ):自動車評論家/環境ジャーナリスト。自動車の環境問題と新技術を中心に執筆するほか、海外の展示会取材も積極的に行なう。International Engine of the Year選考委員なども務める。

『デジモノステーション』2019年4月号より抜粋。

text川端由美