TOPM-ON! MUSICヤバい凶悪犯罪映画『全員死刑』を観たら、...

ヤバい凶悪犯罪映画『全員死刑』を観たら、松本人志の『VISUALBUM』を思い出した

活動第39回[後編] 『全員死刑
参加部員:小出祐介(Base Ball Bear)、福岡晃子(チャットモンチー)

Base Ball Bearの小出祐介が部長となり、ミュージシャン仲間と映画を観てひたすら語り合うプライベート課外活動連載。今回は『冷たい熱帯魚』などの実際にあった凄惨な殺人事件をベースに描いた作品に心奪われがちな小出部長の希望で、『全員死刑』を観ることになりました……。

原作となった手記について小出部長が話す[前編]はこちら

行き当たりばったりで人殺しちゃう怖さがよくわかった

──あっこちゃんはどこが面白かったですか?

福岡 シーンの撮り方っていうのかな、それが毎回違うっていうか。いろんな撮り方や画作りをしていて、普通やったらガチャガチャしてた気がするんやけど、でも全然唐突感がなかった。

印象としてはずっと統一されてたし、あと音楽もバッラバラだったでしょう。アイドルっぽいのから、クラシックから、ただのコンビニのシーンなのにドン、ドンっていう打楽器だけの音がついていて、なんか怖かったし、こういう音楽の使い方あるんやって思った。

エンドロールのクレジットを見ると、音楽に関わってる人の名前が結構多かったなと思って。音楽まわりもしっかり気にしてる人なのかなと。

小出 うん、わかる。著書『実録・不良映画術』でも紹介されてるけど、小林監督は映画作りにおいて音楽に苦労してきたらしいんですね。これまでひとりでやってきていて、撮影や編集はできてもさすがに音楽は作れない、と。

だから、好きな既成曲をガンガン使っていて、『Super Tandem』(2014年)だったかな、劇中できゃりーぱみゅぱみゅ「にんじゃりばんばん」がかかる印象的なシーンがあるんだけど、映画祭かなんかのときに「楽曲の許可取ってますか?」って言われて、「何それ?」って。

福岡 あははは。

小出 それから権利元に使用申請を出したりっていう。そういう手続きを自分で全部やるの大変だよ、お金もかかるし時間もかかる。

福岡 自由だね。今どきのバンドマンってさ、そういう破天荒さとか、豪快さがないやん。だから私、とりあえず権利問題とか考えずに思ったまま作っちゃうとか、なんかそういう人好きなんだよね。

ちなみに『全員死刑』の舞台って福岡やろ。ウチの地元とそっくりなんやけど(笑)。映画に出てる役者さんが、自然なヤンキーっていうか、嘘っぽくなかった。間宮祥太朗さんも、お兄ちゃん(毎熊克哉)も結構自然だなって。

前の『アウトレイジ 最終章』の時(第38回参照)は、めっちゃ迫力あったけど、ヤクザっぽくしている巧い俳優さんと、本物のヤクザに見える人と2パターン混じってたなって感じ。でも今回出てきた人は、みんな自然と不良だなって見えた。

あと、こいちゃんが言った、行き当たりばったりで人殺しちゃう怖さっていうのも、よくわかった。全部その場その場で、先を考られない人たちがやった犯罪なんだなって。

小出 そう。だって「あいつの家に多額の現金があるらしい」みたいな、あやふやな情報で見切り発車した殺人だから。

福岡 見切りすぎるやろ。

小出 原作もひどすぎて笑えてくるんだけど、映画版はツッコミのいないコントを見てるようでしたよね。あえてなのか、ハウススタジオの美術を作り込んでいないその不気味さも相まって、松本人志の『VISUALBUM』を思い出したよ。

そのなかに『巨人殺人』っていう、意地悪な巨人をみんなで殺したはいいけど、デカすぎて死体が隠蔽できないっていうコントがあるんだけど。

福岡 たしかに(笑)。ビジュアルバム感あるね。

新しいロックバンドが出てきた、みたいな作品

小出 今さっき言った「ひどすぎて笑える」ってことについて日頃思うのがね、この『全員死刑』もそうだし、園 子温監督の『冷たい熱帯魚』(2010年)とか実際の連続殺人事件をベースにした作品って、事実が突き抜けすぎていて、残酷であればあるほど一瞬で3周くらいして面白いと思っちゃうのよ。

僕自身そういう作品も好きだし、事件そのものを調べるのも好きなのね。だけど、事実ゆえに、面白がってるっていう自分の心理に対して、後ろめたさもかなり感じる。だから大きい声で「面白い!」って言えないの。

──アンモラルなものを、エンタメ的に捉えることのためらいというか。でも、その「良心」や「正義」から、すっごい窮屈な表現の規制の問題に発展しちゃいますよね。

小出 そう、「不謹慎」ってやつが頭をよぎる。でも小林監督が『実録・不良映画術』の中でこう喝破してくれていて。

“すでに起きてしまった殺人事件から影響を受け、何らかの物語を作るという行為は、人間全体の「怖かったこと」を観て、読んで、聴いて、楽しんでしまうことで、人間全体で相殺しようとする行為だ。皆で生み出した偉大な生理現象だ”、それすなわち“強く賢くなるということだ”と。

福岡 うんうん。

小出 これ、震える名言でした。たしかにそうなんですよね。恐怖を作品に昇華させて語り継いでいくっていうのは、大昔から人間がずっとやってきた大事なことなんですよね。落語もそうだし、見世物小屋もそう。モンド映画もそうだし、多くのドキュメンタリーだってそう。

映画の煽り文句で“衝撃の実話”“感動の実話”みたいなのよく見るじゃないですか。それも「映画化されるほどの実話なら知りたい」っていう心理が人間には働くからですよね。

大牟田4人殺害事件は真相としてわかっていない部分も多いし、次男の手記を読んでも彼の考え方も気持ちも全然わからない。そこに人間の闇があって、それこそがすげえ怖い。でも、それを作品へと昇華させ、乗り越えて次の段階に連れて行くことっていうのが、エンターテインメントの役割だと。

これは、真剣に映画を追っかけてきた人だからたどり着いた考えなんじゃないかと思うんですよね。

福岡 暴力とか人間の闇みたいなものに、ずっと向き合ってきたんだろうね。たぶん自分で映画を続けていくなかで、周りから「やめとけ」って何度も言われたと思う。

小出 なんだろうね。さっきあっこが言った音楽の使い方もそうだけど、我々の知らないバイオリズムだなっていうか。あんまりこういうグルーヴの映画ってみたことない。

福岡 なんか新しいロックバンド出てきた、みたいな。

小出 そういう感じよね、わかる。

福岡 ルーツがわかんない、みたいな。ホントに人生観で音楽やってんだなって感じ。

小出 ざわつく感じだよね。

福岡 そう、何これ!? みたいな。

小出 俺らみたいな堅いバンドからすると、ざわつくバンドだよね。

福岡 でもみんながざわつくのはわかる気が。

小出 だから、映画好きはすごく面白がる作品だと思う。知らないグルーヴだから。だけど知らないグルーヴがゆえに、普段商業映画しか観てない人にとっては距離感があるかもしれないとも思う。

その部分がおいしさなんだけど。そこを楽しむコンテクストをどこまで共有できるかっていうことなのかなって。そして作り手としての余白というか、伸びしろという意味で今後がとても楽しみだなと。

山戸結希監督の『溺れるナイフ』(第30回参照)とかも、今後が観てみたいっていう映画だったし。今回も小林監督の次が楽しみだなって。

福岡 私の勝手な印象やけど、この道で一本勝負してるっていうか。なんでも撮れまっせ、って感じじゃないのが良い。そのへんもロックバンド感がすごいな。

小出 BLANKEY JET CITYかな。『イカ天』でブランキーが最初に出てきたときって、こういう感じだったんじゃねえかって想像しちゃうけどね。

TEXT BY 森 直人(映画評論家/ライター)

今回はいつもと違うおしゃれカフェで感想会を行いました。インスタ映えな環境で、終始、殺人事件の話を……。

このあと、小林勇貴監督の著書『実録・不良映画術』を小出部長から借りていったあっこちゃん。