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暴力と欲と政治、これは地方都市のリアルか?そんな物語を見てミュージシャンたちが唸る【みんなの映画部 前編】

活動第40回[前編] 『ビジランテ
参加部員:小出祐介(Base Ball Bear)、世武裕子、オカモトレイジ(OKAMOTO’S)

Base Ball Bearの小出祐介が部長となり、ミュージシャン仲間と映画を観てひたすら語り合うプライベート課外活動連載。今回は、大森南朋、鈴木浩介、桐谷健太出演の『ビジランテ』。当連載、こんな映画を観るのが続いてますが……。

 

う~~~~ん……面白かったんですけどね

──いよいよ本年ラストの「みんなの映画部」、通算40回目の今回は『ビジランテ』。埼玉県の架空の市を舞台に三兄弟の因縁が荒れ狂う、『SR サイタマノラッパー』シリーズの入江悠監督による熱作でございます。まずは恒例、小出部長からのひと言をお願いします。

小出 う~~~~ん……いや、相当面白かったんですけどね。

──何か引っかかってる?

小出 「三兄弟」っていう題材はすごく好きなんですよ。『カラマーゾフの兄弟』(ドストエフスキーの小説)をベースに『ゴッドファーザー』が生まれたように、王道の型を踏襲している作りは好みです。

「父殺し」っていう型も踏まえていますよね。横暴だった父親を憎みながらも、結局、三兄弟ともその影をずっと追いかけてる。子供の頃に長男を先頭に父を殺そうとするけど失敗して分裂して、大人になってから再会。

実にサバービア(郊外)ものらしい話だけど、アウトレットモールの誘致プロジェクトを推進している地方政治のゴタゴタに巻き込まれていく。実はその中枢に次男が関わっている。

自分の無力さに苛まれている長男、形だけは父のような権力を手にしようとしている次男、実はお兄ちゃんと一緒にいたくて自分なりに頑張ってきた三男。三兄弟それぞれの不器用な人生を思うと、ジ~ンとなったり、ズ~ンとなったりしていたんですけど。

レイジ たぶんラスト10分の問題ですよね? っていう印象が俺はすごくあります。そこまでは面白かった。

小出 うん、うん。

レイジ この2時間のなかで1時間半以上は面白いという気持ちが占めてたので、映画って本当に最後の1秒とかで、自分の評価というか気持ちが全然変わっちゃうこともあるのが、別の意味で面白いなと。

逆のパターンで言うと、石井岳龍監督の『生きてるものはいないのか』(2012年)は、個人的には95%ぐらいまで超つまらなかったんです。でも最後のシーンがあまりに良すぎて、最終的には「ものすごく良かったな」っていう印象に大逆転して。だから映画のラストは大事なんだな~って。

──世武さんがいちばん難しい顔をされてますね。

世武 三兄弟のカルマ的なことってテーマは私も好きというか、「抗えないもの」みたいなお話には惹かれるんですけどね。ただ苦手なのは、「これが地方都市のリアリティーなんだ」って言われている感じ? 私も地方出身なんですけど、たぶんそれと自分のリアリティーがあまりにも違う。

自分の実感からすると、まず重すぎるんですね、トーンが。なのに、ちょっと(北野)武映画っぽくなるところが、え? なんで? っていう。

レイジ 銃が出てきて、引きでパンパンみたいなところですね。

世武 そういう急に現実離れするとこって、やっぱり映画マニア的なのかな、みたいな。そこの「映画が好きな人」っていう部分と、重いリアリティーが混ざっちゃってるっていう。そういうのがあると、レイジくんがさっき言ってたことと近い気がするけど、ちょっと冷めちゃうところがあるから。

──なるほど。日本でクライムジャンル、漆黒のノワール物を作るときの難しさがそこに絡んできますね。

レイジ 入江監督の『太陽』(2015年)というSF映画があったじゃないですか。近未来を描くやつ。あれも終盤15分ぐらいで突然ガーとなってワーってなって、カオスが巻き起こって終わるという印象だったので、それが監督の作風かもしれないですが。良く言えば力技だけど、正直、幼稚な感じを受けてしまうというか。

小出 他の入江監督作品だと、今年の前半に公開された『22年目の告白-私が殺人犯です-』でも、ラストでかなり畳み掛けるんです。ただあの作品の場合は、そこまでの積み重ねがすでに刺激的だった。

びっくりする展開、それをさらに覆す展開、それすらもフリにする展開……みたいなことが起きていたので、最後に行くところまで行っても、ついていけたんですね。

レイジ 取っ組み合いみたいなのって「もういいよ」と思っちゃうんですよ、最後の最後でウワー、アーというのを見せなくてもいいんじゃないかって。

小出 そう感じちゃうこと、ままあるよね。

 

桐谷健太さんのあの痛いシーン……執拗に追ってたよね

──非常に鋭いご指摘が続いたと思いますねえ。入江監督の手癖として「気張ると大味になる」っていう傾向はたしかにあると思うんです。ロジカルな構築はすごく上手なんだけど、情念を爆発させる段になると、特に暴力描写において意外に既視感のあるベタな定型に流れちゃう。そこは世武さんがおっしゃった「映画が好きな人」の弊害って気もします。

レイジ 力技のラストが幼稚に思えてしまうのは、そのぶん前半のギミックの組み方がやたら巧いという理由もあるのかもしれないですね。

小出 三兄弟のそれぞれの出来事をカットバックで見せていくあたりとかね。

レイジ あの複雑なそれぞれの立ち位置と過去のことがすっと理解できる。あと前半の展開の速さなんかはすごいきれいというか。

小出 見事に整理されてたよね。

世武 編集の巧さも大きい。

レイジ ものすごくわかりやすくて上手にポンポンポンって行くぶん、テンションを上げたときの勢い重視な感じが気になってしまうかもしれないですね。

小出 ロジカルにまとめる巧さって意味ではさ、たぶん『22年目の告白』のほうがより前面に出てるよね。映像的にも飽きさせない工夫が盛りだくさんだったし。

レイジ VHSのような質感をわざと使ったり。

小出 そこからすると、『ビジランテ』はどっちかって言うと「情念」に傾いてる。

レイジ 例えば吉村界人くん(地元の自警団に参加する若者役。暗い鬱積を移民差別にぶつける)のくだりもあそこまで派手にする必要があったか? っていう。

──厳密なリアリティーに沿うなら、そりゃモロ犯罪で即逮捕されるわ! ですからね(笑)。もっとこっそりバレないように動くのが現実の選択ではないかと。

世武 そこはやっぱり「このシーンを入れたい」みたいな監督の欲望が優先されているんじゃないかな。

小出 そうだね。あの痛いシーン……桐谷健太さん(三男の三郎役)の手を貫通した箸を抜くシーンとかもさ、執拗に追ってたよね。

世武 長かった。たぶんあれはやりたかったんだよね、絶対。

レイジ あそこは本当に痛そうで、俺は好きでしたけど。だから派手系はあそこぐらいでよかったんじゃないかなって。銃とか出てこなくていいんです。あそこでバイオレンスの要素はもう完全にピークに来てると思う。

小出 うん、物語の緊張感もピークはあそこだったと思う。

レイジ あれだったら現実であり得るじゃないですか。あと最後、次男の二郎(鈴木浩介)に政治家がこうやって血まみれの権利書見せるくだりだったり。あれも過剰というか、余計だと思ってしまった。

──たしかにあれをやっちゃうと、表の社会と裏社会との境目がなくなっちゃう。まったく証拠を残さないで裏と繋がってるっていうほうがヒヤッとするものがありますね。

小出 銃を出す・出さない問題とも関わってくるけど、僕らが知らないところでこんな不正だとか残酷な行為がいともたやすく行われていて、それでまわる社会や経済があるっていうのは、いちばんイヤだし、怖い。だけど、たぶん実際にあるんだと思う。

中盤までその部分をすごく突っついてきていたから、このあとどうなるのかを想像して緊張してたんだよね。ところが後半で「これは映画ですよ~」と言われたような気持ちになってしまって。むしろそれを言うことで面白くなる映画もあるから、難しいところなんですけど。

TEXT BY 森 直人(映画評論家/ライター)

感想会が終わった後、なぜか「世武さんに旬のK-POPを紹介する会」に。深夜まで語っていたにも関わらず帰りのエレベーターの中でもまだ話しているふたりと、ふたりの“ケポハラ”にすっかり体力を奪われた世武さん。

今回は欠席だったハマくんが、J-WAVE(81.3FM)の年越し特番(2017年12月31日(土)23:00~2018年1月1日(日)5:00)でメインナビゲーターを務めます。番組内でラジオ版「みんなの映画部」も展開。小出部長、あっこちゃん、ハマくん、レイジくん、世武さん、部員全員で2017年のマイベスト映画を話します!

篠田麻里子の濡れ場にも言及する[後編](12月31日配信予定)に続く