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儚さと麗しさとミステリアスさと…声優「蒼井翔太」とは何者か? “次元の壁”すら超える存在感を分析する

この人の声を知っておけばアニメがもっと楽しくなる(はず)! 今、旬を迎えている声優の魅力をクローズアップする連載コラム。今回は、現在放送中のTVアニメ『乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…』ジオルド役などで活躍中の蒼井翔太さんに注目。抜群の歌唱力を生かした歌手活動のほか、『ポプテピピック』『ギャルと恐竜』に本人役として出演するなど話題にも事欠かない彼の個性を徹底分析します。




◆『うた☆プリ』美風藍として成し遂げた見事なシンクロ
声が人を惹き付けるかどうかは、その人の声そのものの成分だけでなく、発語のクセも大きく関わっていると思う。たとえば、米津玄師の独特な歌声がエモく感じるのは、心の奥を覗きこむような“内向き”で骨の太い声質と、唇を大きく変化させずに歌う曖昧な発音が、ある空気感を確実に醸し出すから。若い頃の松田聖子の歌声が万人を魅了するのは、透き通ったキャンディボイスという声質だけでなく、ワンフレーズのお尻に来る語尾を大切に置きにいくときに軽く音がしゃくれたり、舌足らずな発音になるクセが、自然に甘えた響きを加えているからではないかと思う。そういう、その人独特の発音のクセは魅力的なフックとなり、心に残る声としての印象を強めていくのだ。

そんな、心に残る語り口としてのフックが明確にあるのが、蒼井翔太の声だ。声質の一番の特徴は、少しこもり気味に聴こえる鼻にかかった甘い声。それだけでも母性をくすぐられるが、女性ファンをさらにキュンとさせるのが、語尾の息の抜け感だ。抑揚を抑えた演技では、それが謎めいたクールな響きとなり、感情を込めると、甘さが際立つ。語気を荒げたセリフを強く言い放つときも、最後にフッと消え入るような息が混じることで、どこか幼く、線が細い儚さと切なさを残す。高めのキーも相まって、中性的で妖艶な魅力も加わっている。

『うたの☆プリンスさまっ♪』の美風藍は、そんな蒼井翔太のために作られたキャラといってもいいハマリ役だろう。蒼井の声優ブレイクのきっかけとなり、彼の一番の代表作ともいえる。

美風藍の正体は、ある人物をモデルに作られた歌うためのロボット。藍はアイドルユニット・QUARTET NIGHTの一員となって仲間との友情を知り、ヒロインに恋心を抱くことで、次第に人間らしい感情を獲得していく。喋り口調も、最初は感情の起伏がなくクールだが、物語が進むにつれて感情的なニュアンスが増え、ヒロインに甘える感情や儚げな感情の揺れ動きを見せるようになる。

人ならざる存在としてのミステリアスさがありながら、藍の内面の成長がしっかり感じられたのは、蒼井の声と口調がキャラクターに見事にシンクロしていたからだ。加えて、美風藍本人がアニメから抜け出してきたような蒼井の麗しいルックスと抜群の歌唱力、アイドルらしいプロフェッショナルなパフォーマンスと佇まいも、蒼井翔太=美風藍の存在感を見せつけた。

◆中性的な魅力を突き詰めて実現した、“彼にしかできない役”とは……
美風藍を筆頭に、蒼井が演じてきたキャラクターは、高貴な雰囲気を放つ美少年が多い。その中で、蒼井の声の印象の特性のひとつ“ミステリアスさ”を色濃く反映していたのは、『KING OF PRISM』の如月ルヰ。主人公(一条シン)をプリズムショーに導いた謎の少年は、いつも妖しい微笑みを浮かべる温和な雰囲気を持つが、無邪気で幼い部分も。蒼井の声質にマッチしたキャラクターだ。

“幼さ”から来る魅力が色濃く反映されていたのは、『王室教師ハイネ』。女の子好きのチャラくてナルシストな王子だが、その一方で、子どもらしい寂しがり屋の一面がある14歳のリヒト・フォン・グランツライヒは、蒼井の持つ天性の“王子様感”と声と演技の若々しさが引き出された役柄だった。

この『王室教師ハイネ』は、アニメ放映直後にミュージカル版『王室教師ハイネ -THE MUSICAL-』も上演。そこでも蒼井は同じリヒト・フォン・グランツライ役を生身で演じ、現実離れした2.5次元俳優としての実力を見せつけ、好評を博した。最新の出演作では、現在放送中の『乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…』のジオルド・スティアート王子も、彼の“王子様感”にぴったりのキャスティングだ。



“中性的”な魅力と現実離れしたファンタジーな存在感という、蒼井本人の魅力を存分に発揮したキャラクターには、『マジきゅんっ!ルネッサンス』の土筆もね役や『初恋モンスター』のレンレン役もある。とくにレンレンは、劇中キャラが推している男の娘アイドルという弾けたキャラだ。蒼井の声の幼い甘さは、猫耳に尻尾をつけたはっちゃけたアイドル役を演じても嫌みや違和感がない。

そして女性と見紛うばかりの中性的な魅力をさらに突き詰め、蒼井にしかできない役として思い出されるのは、『戦姫絶唱シンフォギア』シリーズ第4期『AXZ』で演じた錬金術師・カリオストロ。女性の肉体を得た元男性という難しいキャラクターを、ふだんはキュートな振る舞いでかわいらしく、血気溢れるバトルシーンでは男らしい力強さが滲み出る迫力で演じきり、そのギャップでファンを大いに魅了した。女性ファン向け作品への出演が多かった蒼井の存在感を男性アニメファンにも伝えた『戦姫絶唱シンフォギアAXZ』は、蒼井のキャリアにおいても重要な作品だろう。

◆2次元・3次元の壁すら超える存在感とチャレンジ精神
そして、蒼井翔太を語る上で欠かせない要素がもうひとつ。それが“歌”だ。

『うたの☆プリンスさまっ♪』の美風藍、『少年ハリウッド』の富井大樹、『MARGINAL#4』の新堂ツバサ、『ツキウタ。』シリーズの水無月涙など、ストレートなアイドル役のほかにも、蒼井の当たり役は歌手役、アイドル役など歌うことを必然とした役が多い。それは、ソロアーティストとしても大活躍中の蒼井の圧倒的な歌唱力と、個性的な歌声&ライブパフォーマンスが、歌もの作品においては最大の武器になるから(蒼井翔太として声優活動を始める前に、中村中を輩出した音楽コンテストに進出し、SHOWTA.名義でソロデビューを果たしていた実力と過去がある!)。 ダイナミックなハイトーンをいかした圧巻の歌唱と、演じている美少年役とのギャップもまた、蒼井翔太キャラクターの大きな魅力となっている。

さらに蒼井は、従来の声優の枠を超えたチャレンジングな役柄でもファンを驚かせている。実写キャスティングで話題を呼んだ『ポプテピピック』と、『ポプテピピック』での時空を超えたキャラクター「蒼井翔太(CV:蒼井翔太)」をそのままスライドし、作品の垣根を跳び越えた『ギャルと恐竜』への出演も、蒼井自身のファンタジスタ的な存在感と、2次元と3次元を自由に行き来する果敢なチャレンジ精神が為し得たものだ。

昨年から今年にかけては本格派ブロードウェイ・ミュージカル『ウエスト・サイド・ストーリー』に挑戦するなど、キャリアを重ねるたびに、今まで我々がイメージしてきた男性声優像をくつがえしながら、唯一無二の存在感を提示し続ける蒼井翔太。次はどんな活動で我々を驚かせてくれるか、とても楽しみだ。

文 / 阿部美香

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